お知らせ 食物栄養学科
【食物栄養学科】実験実習紹介① 1年次前期 生化学実験
この授業では、現代の生化学研究に使われる種々の実験法の原理や手法について実験を通して学んでいます。
生化学は栄養学の基礎となる根幹科目の一つで、三大栄養素(糖質、脂質およびタンパク質)の性質とその代謝機構、そして遺伝情報の制御機構について学びます。生化学実験は、生化学の知識を基に(1)課題に積極的・主体的に取り組む姿勢を養う、(2)実験を通して自然現象や生命現象を理解する目を養う、(3)実験ノートやレポートの書き方等を含む基礎的実験遂行力を修得する、を達成目標としています。
今回は酵素実験の一環として、身近な食材である“大根”に含まれるアミラーゼによるでんぷん分解反応(でんぷん→糖)の検出を行うことを目的として授業を実施しました。この実験はこれまでヒト唾液アミラーゼを用いてきましたが、新型コロナウイルス感染症対策のため、実験材料を大根に変更しております。
アミラーゼとは、でんぷんなどの多糖類を加水分解する酵素の総称であり、α-アミラーゼやβ-アミラーゼなど複数の種類があります。前者はヒトの唾液、後者は今回使用した大根などの植物中に存在します。多糖類の一種であるでんぷんはグルコース(ブドウ糖)が結合して長く連なった高分子化合物ですが、β-アミラーゼの作用により非還元末端から二糖であるマルトース(麦芽糖)が切り出されます。その特徴を踏まえて今回の授業では、大根アミラーゼの作用によるでんぷんの加水分解の様子を、でんぷんの高次構造の変化に関する情報が得られる【ヨウ素でんぷん反応】とアミラーゼによる還元糖(マルトースも還元糖の一種です)の生成を検出することができる【ベネジクト反応】を利用して観察しました。実験結果は下記の写真の通りです。
生化学実験は難しい専門用語が多く、いざ実験ともなればマイクロピペットなどの精密機器の正確な操作を求められたりと、学生にとっては困難が多い授業の一つです。今回も、各班毎に全く同一の操作手順で実験を行なったはずですが、上手く結果を出すことができた班もあれば、失敗してしまった班もありました。短大一年生が行なう学生実験の性格上、すべての班が実験を完璧に成功するといったことは望むべくもありませんが、学生実験は「失敗から何を学び取るか」こそが重要です。満足のいく結果を得ることができなかった班の学生は、なぜ失敗をしたのか振り返り、その反省を生かして次回の実験への改善に繋げようと考えるなど、一生懸命考察に取り組んでいました。一週間後に提出されるレポートが楽しみです。
今後は、塩析やイオン交換クロマトグラフィーを利用したタンパク質精製実験、抗原抗体反応を利用したイムノブロット法、DNA精製実験やPCR反応を用いた遺伝子型同定実験を実施する予定です。