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お知らせ 文化コミュニケーション学科

【現代文化学部】授業紹介「声の文化論演習Ⅰ」(山本歩助教)

「声の文化論演習」という科目名はちょっと抽象的でわかりにくいかもしれません。しかし声について考えることは、人間文化のほとんどすべてについて考えるのと同じことなのです。コミュニケーションのひとつである「会話」について、あるいは宗教・芸術・娯楽といったさまざまな領域に現れる「歌」や「劇」について考えを深めたいのならば、まず声のことを考えなければならないと思います。

また(私の専門領域である)詩や小説といった文芸文化は、たしかにウォルター・J・オング『声の文化と文字の文化』にならって言えば「文字の文化」、つまり活字文化であり、もちろん本を開いてもそこに音声はありません。ですが、言語芸術が人間の言語(音声)コミュニケーションを前提として成立している以上、詩や小説といった活字文化もけっして音声と無関係ではないのです。ライトノベルやマンガの登場人物たちが「しゃべっている」と感じる読者は多いでしょう。

今年度はこれまで、たとえば以下のような授業を行いました。
・前田愛の論文「音読から黙読へ」や、高橋源一郎の小説「ラップで暮らした我らが先祖」など眺めつつ、「音読」という鑑賞に再注目した。
・その上で、文芸作品の朗読を鑑賞し、学生たちも朗読(群読)を実践した。
・学外学修として「くまもと文学・歴史館」を訪問。同館スタッフの方々にご協力いただきながら、熊本と文学の結びつき、地方文学の意義について考えた。
・ポリフォニー(多声)としての文学のありようを提唱したバフチンの理論を学び、文芸作品に混在される様々な意見や文体を読み分ける作業を行った。
・熊本を代表する作家・石牟礼道子氏の作品を鑑賞した。方言・詩的表現・公的文体などの混在する現代小説は、むしろスタンダードな活字文化を相対化するきっかけを与えてくれる。

文芸文化のなかの多様性や、文芸文化から他の文化への影響などを学ぶことを通して、学生たちには言葉や文化資源への関心を深めてもらいたいと思います。

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