お知らせINFORMATION

お知らせ 文化コミュニケーション学科

【現代文化学部】教員の研究紹介③ 山本歩助教(文芸文化)

授業では芥川龍之介や太宰治などもよくあつかうのですが、私の主要な興味の対象は田山花袋という作家の文芸および活動です。
花袋の大きな仕事は、明治40年代に自然主義文学運動を盛り上げたことですが、その「あら」の多さによって後にかなりの批判を浴びることにもなります。彼の作品には『蒲団』や『田舎教師』がありますが、一般にあまり魅力的でないので、割とバカにされてきました。じゃあそんな作家を研究対象とすることに、どんな形で意欲を持っているかと言うと、大体つぎの3点です。

1.自然主義ではないもの。とかく花袋の言葉は自然主義の思想に関係づけられるのですが、自然主義に還元しない説明の仕方を、見つけられたらいいなと思っているわけです。言い換えると、本文を読み込むことで、そこに浮かび上がる意味やテーマに、自然主義を飛躍するものを見出していきたいのです。

2.物語の強固さと対峙する。いかに自然主義=リアリズムを標榜しても、ロマンチシズムやドラマチックな物語を、作品から完全に排除するのは難しい。人間は物語が大好きなので。花袋の文芸は、「こう展開したら面白くなるのに」という物語の型に一生懸命抵抗しようとしているところがあって、そこが私としては好きなのです。当然ながら面白くならないので、面白くないんですが、私としては面白い。

3.自然主義の周縁部に触れる。自然主義という現象が起こったとき、その末端部には、なんとなく「理解している」つもりになっていた人たちがいっぱいいたわけで、そんな人たちが花袋の作品や活動に触れながら何を叫んでいたのか。花袋の関わった雑誌や、小説の選評活動などから、そんな〈ゆがみ〉をすくい取ってみたいのです。

その他、明治40年代に活発化した、作家志望者への〈小説の書き方〉言説=〈小説作法〉にも関心を寄せています。花袋の『小説作法』(明治42年)なんかがありますが、小説指南の現場には他にも、徳田秋声、小栗風葉といった自然主義作家たちの名前が見え隠れします。やはり自然主義の周縁にあったものとして興味深いと思います。

参考:田山花袋記念文学館
(http://www.city.tatebayashi.gunma.jp/bunka/06_kine/06_kine.html)

 

     田山花袋       田山花袋『田舎教師』挿絵(岡田三郎助画、明治42年)

その他のお知らせ