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【子育て研究センター】令和2年度 第5回 乳幼児保育研究会を開催しました!

第5回乳幼児保育研究会を開催しました!

2月24日(水)に、第5回乳幼児保育研究会を開催しました。今月の研究会は、0.1.2歳児の保育をテーマに、カトレア保育園の吉田さんと、はけみや保育園の永田さんのお二人に報告をして頂きました。

まず初めに、カトレア保育園の吉田さんより担任している0歳児クラスでの実践について報告をしてもらいました。

吉田さんのクラスは、絵本や歌が好きな子どもが多く、保育者が絵本読みや歌遊びを始めると自然に子ども達が集まって楽しむ姿があるそうです。最近は、保育の中にわらべうたも取り入れており、子どもたちとのやりとりを楽しんでいるということでした。報告の中心は、担任として気になっている子どもについての相談でした。その子どもは7ヶ月で入園してきたのですが、入園時点では寝返りができない、お座りが不安定、スキンシップを喜ばず触れられることを嫌がるなど、身体の育ちの乏しさがあり、とても緊張している様子が伝わってきていたとのことです。また、遊びや人に対して興味を示さず、表情の乏しさも気になっていたそうです。その子どもの母親も、身近に育児の悩みを話したり相談をしたりする相手がいない(母方の実家は県内だが遠方であり、父方の実家とは関係が薄い様子、あまり父親の存在が見えない等)ということで心配していたそうです。連絡帳等を通して家庭での様子を探ろうとしたそうですが、こちらが尋ねている事への返事が書き込まれていないなど、母親とのコミュニケーションにも難しさを感じていると話されました。現在は、1歳半になり、特にわらべ歌を毎日繰り返し行う中で、最近になって少しずつ笑顔も増えてきているそうです。

メンバーからは、「これからももっともっとかかわり続ける、表情が変わるまでかかわり続けてほしい。実際に姿が変わってきているのが何よりの証拠だと思う。にこにこ笑う場面や時間を増やしたいという保育者の思いが大切では」、「好きな先生と一緒に過ごし、楽しいことを経験させてあげる、わらべ歌も継続しながら、人と関わることやコミュニケーションを取ることはこんなにも楽しいのだという生きるよろこびを伝えてあげたい。楽しい経験が膨らんでいって、またそれを家庭に波及させていく。保育園としてできることの先ず大事なことは、楽しいという思いを母子が持つことができるようにすることではないか」という意見が出されました。また、母親の身近に相談相手がいないということを受けて、あるメンバーから「私の園でも、連絡帳をあまり読んでいな母親がいた。不安そうな姿もあったため、母親の話をしっかりと聞くことができるよう面談の機会を設けたところ、スッキリしたのか、面談を境に表情が変わったように思う。こちらからの要求は一旦抑えて、まずはしっかり話を聞くことが大事だと思う。」との体験談が語られました。さらに続けて、「色々なことができていない保護者に対して、はじめは何でできないのだろうと思っていたけれど、私も面談を行ったことで、できていない保護者という見方が変わり、母親なりにやろうとしていることに気付けた。それからは、母親のことも認めていけるようになった。」という保育者自身の変化も語られました。そこから連絡帳について話題になりましたが、「連絡帳は、保育者は全員の分を読むことができるけれど、母親一人ひとりは自分の連絡帳しか分からない。案外どんなこと書いたら良いのか悩む保護者も多いのではないか」、「我が子を預けていた園の先生から、『これは連絡帳じゃなくて私との交換日記だからね』と言ってもらったことがあり、とても気が楽になった。」、「うちの園では、母親に許可を取って、連絡帳をコピーしてクラスだよりに載せて紹介したりしていた。そして連絡帳でのやりとりを保育の参考にして展開させたことも発信していった。」という興味深い話も出ました。

保育者として大切にしたい姿勢とは、保育者側の意見や考えをどのように保護者に伝えて分かってもらうかということの前に、子どもや保護者の声や思いを聞こうとすることなのでしょう。話の中で「話し上手な保育者よりも、聞き上手な保育者に」という言葉が出ましたが、まさにその通りだと思います。

最後に吉田さんは「これから面談などをおこなう時間をとりながら話をしていきたい。参加者の話を聞けて勉強になった」と振り返っておられました。

次にはけみや保育園の永田さんに担任している2歳児クラスでの保育について、4月からこれまでの経緯を踏まえて報告してもらいました。

4月当初、クラスの中に、母の妊娠をきっかけに不安定な姿が見え始め、友達に乱暴したり登園を渋ったりする子どもがいたそうです(※仮にAくんとします)。永田さんは、同僚の保育者と相談を重ねながら、Aくんが園生活が楽しいと思えるように、Aくんの世界に周りの友達をつなげていくこと、Aくんを中心とした保育とクラスづくりを心掛けてきたとのことでした。日々の遊びや生活の場面で、クラスの子ども達に「Aくんといると楽しい」ということを丁寧に伝えていったそうです。すると少しずつAくんとクラスの子どもたちの様子にも変化が現れ、Aくんの口から「好きな友達がいるから保育園に行きたい。」という言葉も出るようになったとのことでした。11月頃に、クラスで好きな絵本の世界に入り込んでなりきることを楽しむ子ども達の姿があったことから、永田さんはAくんも含め絵本の世界を味わう劇遊びを保育として展開していったそうです。友達と一緒に同じ絵本の世界に浸ることで感じられる楽しさや嬉しさを味わってほしいという思いがあったそうです。

年が明けた1月になると、今度はクラスの別の子ども(※仮にBくんとします)に、気になる姿が出てきたそうです。実はこのBくんは、Aくんにとって身近な存在で、これまで一緒に遊ぶ姿も多かったそうなのですが、Bくんとの会話の中で「〇〇ぐみ(※自分のクラス)は嫌だ」、「Aくんは叩くから嫌だ」(※Aくんが友達に乱暴する姿は、ここ最近無くなってきている)という言葉が出てきたそうです。そのため、一緒にクラス担任をしている保育者と相談し、2人の担任で交代しながら保育者が遊びに誘ったり声をかけたりしていったとのことです。そんなある時、Bくんの気持ちが不安定になり、保育室の棚に入り込んで出て来られなくなってしまった事があったそうなのです。その時、一番先に手を差し伸べたのがAくんだったそうです。このやり取りを見て永田さんは、思い返せばAくんの思いに寄り添い、支えてくれたのは友達だったはずなのに、Bくんに対しては保育者からの関わりばかりになっていたことに気付いたそうです。Bくんの見せる不安定さとそこへのかかわりも、友達との関係の中で見ていくことの必要性に改めて気付かされたということでした。

自我が拡大し、自分で(が)やりたい、自分を尊重してほしいという欲求がぶつかり合うことで他者とのトラブルが絶えない2歳児ですが、一方で他者(保育者や友達)の模倣を通して、心と身体を通わせ合うことによろこびを感じるのも2歳児の特徴です(そして、絵本や紙芝居などの虚構世界をおもしろがり、まねっこ遊び、つもりや見立て遊びを楽しむのもこの時期です)。2歳児クラスでの友だちづくり、またクラス集団における育ちを支えるにあたっては、生活や遊び場面において丁寧な共感的関係をつくりながら、日々の面白さ、楽しさを追求していくことが2歳児保育の目標と言えるでしょう。その意味で、この永田さんの実践報告に出てきた絵本の世界に浸ることや、他者とのつながりを意識した保育と援助は大切な視点であると言えます。

参加者達からは、「2歳児という友達を意識し、友達の姿に触発される姿を肯定的に受け止めることが大切だと思う。」、「子どもなりに、言われていることは分かっている、しちゃいけないことも分かっている2歳児。でも、自己主張の裏にある、私の思いを聞いてよ!ぼくを尊重してよ!という大切な要求に寄り添っていきたい。その為には、子どもや保育者の“間”が大切だと思う。」という意見が出されました。先に記したように、友達の存在が大きくなりつつあるこの時期だからこそ、楽しい雰囲気の中でゆるやかに繋がっていく姿を大切にしたいものです。

最後に永田さんは「子ども達と向き合っていきながら、間を大事にしたり、保育者として余裕をもったり、たまには、まあいっかと思いながら生活していきたい」と振り返っておられました。

今回の研究会も、メンバー全員で考えを深め、保育の中で大切にしたいことを確認することのできた回となりました。来月も引き続き学びを深めていきたいと思います。      (文責:二子石諒太)

吉田さん(カトレア保育園)
永田さん(はけみや保育園)

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