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【子育て研究センター】令和2年度 第3回 乳幼児保育研究会を開催しました!

第3回乳幼児保育研究会を開催しました!

12月23日(水)に、第3回乳幼児保育研究会を開催しました。今月の研究会は、ルーテル学院幼稚園の今田さん、山鹿プラザ内保育園の怒留湯さん・長迫さんから、それぞれ報告をして頂きました。

まずはじめに、ルーテル学院幼稚園の今田さんからは、0.1歳児混合クラスの子どもについて報告がありました。今田さんは、保育者1年目の新人保育者とのことですが、子どもの姿を丁寧に捉えようとし、子どもの思いや願いを受け止めようとしていることが報告から伝わってきました。

今回の報告では、クラスの中のある女児(1歳)について話がありました。その女児は、何か理由があるようでもなく突然友達を押してみたり、友達が持っている物を無理に取ろうとしたりする姿があるそうです。また、友達と手を繋ぎたいあまり無理矢理手を引っ張るなど、今田さんから見て、友達とのかかわりの場面において課題があると感じているとのことでした。また、一方では、一人遊びも多く保育室の隅や棚の中で寝転んでいたりするなど、その女児が見せる姿をどのように理解したら良いのか分からないと感じることがあるそうです。

今田さんは、その女児の行為に対して、その子なりに友達に興味を示しているが故の姿であると考え、どのようにすればお互いが気持ちよく繋がれるのか考えていたそうです。一方、同僚の保育者からは、「一人遊びの保障も大事だから無理に友達とつなげようとしなくても良いのではないか」というアドバイスをもらい、具体的にどう関わろうか頭を悩ませているとのことでした。

報告を受けて、参加者達からは「気持ちを汲んでくれる身近な大人(保育者)の存在は大切だと思う。1歳半を超えると友達の存在が大きくなり、自分からかかわろうとする場面が増えてくる。例え不適切な関わり方だろうとも、『ダメだよ、押さないでね』と口にする前に、関わりたいという思い自体に共感し、代弁してくれる大人がいると心の余裕が生まれるのではないか」、「行動だけを見て判断するのではなく、その子なりの表現(心の言葉)だと捉えてほしい。そして、遊びの中でその女児の素敵な場面を見つけたり、楽しく遊んでいる時間を充実させたりすることを意識したらよいのではないか」という意見が出されました。今田さんは、「確かに、友達を押すという行動を止めたいという思いが強く出すぎて、制止や禁止の声掛けが多くなっていたことを反省している」と振り返っていました。また、その女児は保育者とままごと遊びをするのが好きなようで、「先生とままごとするのが楽しいのだったら、ままごと遊びを中心に保育をすすめていき、そのままごとの中で『お友達の~ちゃんにもご飯をあげようか」等と友達と楽しさを共有すると良いのではないか」という意見も出されました。

また、同僚の保育者からの「一人遊びの保障」についてのアドバイスについてですが、もちろん一人遊びの充実はとても重要なものであり、一人でじっくりと遊び、周囲の環境と深く対話をすることが、その次の平行遊び、そして友達と関わりながら役割分担をするなど協同的な遊びへと発展していくための基盤となります。ただし、子どもが他者に気付き、友達同士が繋がっていくためには、そのきっかけを保育者が援助することも必要です。平行遊びとは、それぞれが自分の遊びをしていながらも場や空間を共有している遊びです。そこでは、友達間の直接のやりとりを期待するのではなく、「おんなじ」「いっしょ」「友達といっしょって嬉しいね」というその場の雰囲気をまるごと味わうということを意識することが大切でしょう。こうした経験を繰り返している内に、何かのきっかけで友達とのつながりが生まれてくるのだと思います。クラスの中で楽しい暮らしを毎日送る中で、その子らしさ、おもしろさに注目し、心地よい空間がつくれると良いのではないでしょうか。最後に、今田さんは「子どもの気持ちを代弁しつつ、行動を見守っていきたい。また保護者との連携や友達との繫がりを意識しながら、支えていきたい」と振り返っておられました。

続いて、山鹿プラザ内保育園の怒留湯さん・長迫さんから、園の保育室環境について今悩んでいることについて相談がありました。この園は、平成30年に開園したのですが、園舎は山鹿プラザという商業施設の中にあった店舗跡を改装して使用しているとのことです。そのため、造りそのものが保育向けになっておらず、部屋の作り方や環境構成に苦慮されているとのことでした。また、園庭もないため、近くの公園まで散歩し、その公園にある砂場を利用して遊んでいるそうです。怒留湯さんからは、おもちゃの用意の仕方や選択基準、環境構成等について質問がされました。

質問に対して、参加者から以下のような様々な意見が出されました。

・保育の環境を考える時に重要なのは、どのような保育をしたいのか、子ども達にどのような経験を保障したいのかという保育の方針や理念である。環境構成とは保育者の願いの表現でもあるため、子どもの育ちの状況や課題なども踏まえつつ、一度そこをじっくり考える必要があると思う。

・おもちゃ一つ一つの遊ばれ方を観察しながら、保育者の意図や願いに応じて選択するとよいのではないか。また、おもちゃというのは、子どもに与えて一人で遊ばせるものではなく、おもちゃを介して保育者や友達とコミュニケーションを取るという側面もある。例えば、「友達と繋がることができる」という基準で選別するのも良いのでは。また、既製品ではなく、できるだけ構造性が低くシンプルなもののほうが見立て遊びやつもり遊びが広がっていくと思う。

・毎日、必ず公園に散歩をして土や外の空気に触れることを保育の中心に据えると、その関連で一日の生活がデザインできる。保育方針や理念に応じて保育内容も形作られてくると、そこまで沢山のおもちゃは必要ない気がする。また、少し広いスペースを確保することができるようなので、さくら・さくらんぼリズム等の身体をしなやかに動かす時間を設けるのも良いと思う。

・0歳児の部屋の確保は大切。生活リズムも違うので安心して午睡ができる環境や、安全に動き回れる畳の部屋等を用意する必要があると思う。

最後に怒留湯さんと長迫さんは、「今、本当に手探りで子どもにとって良い環境はどのようなものか試行錯誤をしている。今日聞いた意見を参考に、子どもの姿を見ながら考えていきたい」「さくら・さくらんぼリズムなども興味をもった、是非取り入れて、子どもの生活を全体的な視点で考えていきたい」と話されていました。保育環境は園それぞれで、必ずしも充実している園ばかりではありません。また、さらに現在コロナウイルスのために多くの制限がかかり子どもや保育を取り巻く環境は一段と厳しくなっているのも事実です。そのような中にあって、子どもの豊かな育ちや生活を願い、日々試行錯誤する現場保育者の姿が報告から浮かびあがってきたように思います。

今回の研究会も、メンバー全員で考えを深め、保育の中で大切にしたいことを確認することのできた回となりました。来月も引き続き学びを深めていきたいと思います。      (文責:二子石諒太)

今田さん(ルーテル学院幼稚園)
怒留湯さん(山鹿プラザ内保育園)

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