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【子育て研究センター】第10回乳児保育研究会を開催しました!

新年明けて初めてとなる第10回の乳児保育研究会を1月29日(水)に行いました。今回の研究会では、白川保育園の西山先生と、はつの・あそびの森こども園の松本先生に報告をしてもらいました。

はじめに、白川保育園の西山先生から、1歳児クラスのある子どもの姿についての相談がありました。白川保育園の1歳児クラスでは、24名の子どもを3つのチーム(グループ)に分け、それぞれに担当保育者が付くという少人数制を取っているそうです。このチームとは、固定というわけではなく、子ども同士の関係性をみながら必要に応じて変えているということでした。そのチームの中に、園生活の中で不安が強い様子が見られる子どもがいるそうです。毛布を肌身離さず持っていたり、いつも抱っこやおんぶを求めてきたり、また特定の保育者の側から離れようとしない等といった姿を見せる子どもがいるとのことでした。保育者集団で話し合い、その子どもとのかかわりについては、なるべくゆったりとした雰囲気と時間を心掛けてかかわることを意識されたそうです。その上で改めてこの研究会で参加者からの意見を聞きたいと言うことで報告・相談をしてくださいました。

参加者からは、先ずその子どもの家庭の状況や過ごし方について質問がなされました。家庭の状況としては、母親の仕事が忙しいのが続いており、さらに父親の体調が優れないことと重なって、祖母宅に泊まったりすることも多いようで、生活環境としてはやや不安定なこともあるとのことでした。参加者からは「お父さんの痛みやお母さんの仕事の大変さを、1歳とはいえ子どもが背負い込んでいるのでは」、「子どもは、親の大変さや不安を大人が思っている以上に引き受けるもの。そのため家庭での不安が園で表現されているとは考えられないか」、「そして園でもまた、先生の困っている感が、『私困られている!?』というように子どもに伝わっているのではないか」等の意見が出ました。そのため、「まずは安心して1人や先生と一緒に過ごせる空間や、同じものに興味を持つ友達との関係を支えていくなど、園での居場所づくりを意識してみては?」というアドバイスがありました。実際に、いつもは特定の先生から離れようとしないその子ですが、ある日、その子どもが友達とお家ごっこ・ままごとをするときに、お邪魔しますの代りの「ピンポーン」(玄関チャイム)で、他者と楽しそうに過ごす瞬間があったそうです。そのような友達との共感関係や遊びの中で友達と通じ合った瞬間を保育者が逃さず拾っていきながらその子どもに寄ってくる友達を把握するなどの意識も必要でしょう。そして、保育者の意識として、「“自分から離れられない子どもにかまってあげている”のではなく、この時間・空間をこの子どもとどう豊かに過ごそうか、過ごせるかという意識でかかわってほしい」という意見も出されました。

1歳児から2歳児にかけて、自我が芽生え、膨らんでいく時期であり、自分を尊重してほしいと思いがいっぱいです。また、自分の意思を聞いてもらえたということに満足や安心を覚える時でもあります。保育者と離れずにいる背景には、基本的に先生は自分を受容し尊重してくれるけども、周囲の友達はそうではないことに気づいているということなのかも知れません。ある参加者から「“ハンブン”ができるのは自分が“イッパイ”を感じてから」という言葉がありましたが、まさにその子どもが家庭や園での生活に受け止めてもらえるという実感に根ざした満足感・安定感を得ることができるために、子どもにとっても、保護者にとっても園の中に居場所ができていくよう支えることが大切だと実感しました。

最後に西山先生は、「きっといつか折り合いをつけてくれると思いながら、しっかりと子どもの泣きを保障していくことも必要だと感じた。家の様子も把握しながら、園と保育園の繋がりバランスも意識しながら、同僚と考えていきたい。それと同時に、お母さんの困り感にも寄り添っていけたら。」と話されていました。

次に、はつの・あそびの森こども園の0・1歳児クラスを担任している松本先生からの報告です。はつの・あそびの森こども園は、給食は手作では化学調味料や添加物が含まれる食材は一切用いない等、食について様々な配慮と工夫をしている園です。松本先生からは、2歳8か月の子どもの食事場面についての相談がなされました。

その子どもは、普段の遊び場面でも動きが多く、突発的な行動が目立つ子どもだそうです。また、視覚や聴覚の過敏さがあると感じているようで、保育者が、「そんなに周囲にアンテナを張り巡らしてしんどくないのだろうか」と心配するほど保育者や友達の発言や動きをよく観察している様子があるとのことでした。同世代の子どもの中では器用さを感じることもあり、製作系の遊びやごっこ遊びでは夢中になる姿があるとのことでした。

園や保育者としては、できる限り一人はその子どものそばに付き、時間と遊びを共有しながら関係をつくっていくことや、その子どもの特性や傾向をつかみ、安心感をもてるように言葉かけや援助をおこなうことを意識されているとのことです。ただ、食事場面では、食事に興味を持ってもらえるように声を掛けたりするなど色々と工夫しているのだそうですが、その子どもはよく離席をしてしまうようでした。

松本先生から参加者へ食事の時に離席が多い子どもへの対応についての質問がなされました。参加者からは、「その子どもの家庭での食べ方や食事の時間の環境を聞いてみたらどうか」、「感覚の過敏さが見受けられるのなら、もしかすると空調や友達の会話など様々な音が響いて集中が難しいのではないか。私の園でも、静かな環境で食べることができるように、最初は1人で食べ始めるなどの配慮をしている子どもがいる。」といった意見が出されました。園と家庭での食事環境の違いによって、食事が取りにくいという状況への指摘がありました。また、その子どもに限らず、最近の子どもの中には食べることへの興味がない様子があったり、「あ~お腹が空いた~!」という姿もあまり見受けられなかったりするとの話題になりました。そのような子ども達には、その1回の食事についてだけを考えるのではなく、1日の生活サイクルやリズムの視点から、昼食を食べ始める時間は早過ぎないか?家庭で食べる朝ごはんの時間と量を把握できているか?場合によっては午前のおやつを抜かしても良いのではないか?園でお腹が空くほど遊び込めているか?等という視点から見直すことが必要なのではないかということを確認しました。保育では、しばしば切り取られた一部の姿への対応が問題にされることがあります。これまでもこの研究会で確認してきたことですが、その場面だけを切り取るのではなく、子どもの生活全体の視点で以て、遊びの充実や子どもの生活の満足度にも目を向けていくことが必要であると考えます。

松本先生は最後に「子ども達の良い所を認め、褒めつながら、特に外遊びを充実させていきたいと思う。食事に関しては、職員全員で相談しながら食事をするときの環境を中心に見直していきたい。」と話されていました。

昨年に引き続き今回も、参加者全員で子どものかかわりについて深めることができた研究会となりました!

(文責:二子石諒太)

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