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【子育て研究センター】第9回乳児保育研究会を開催しました!

令和元年最後の12月18日に、第9回乳児保育研究会を開催しました。年末の忙しい中にも関わらず、たくさんの保育者が集い、活発な意見交換が行われました。今回は、小さな森の保育園の加藤織江さん、あゆみ保育園の須崎裕子さんから報告していただきました。

まず、加藤さんからは、0〜2歳児の小規模保育における「意欲や主体性を保障でき、丁寧な関わりを行うために」というテーマで、動画を用いて実践報告をしてくださいました。小さな森の保育園は、開園より4年が過ぎようとしています。初年度は、活動も昼食も設定し、場所を決め、クラス単位で揃って過ごし、クラス担任もいて活動もクラスごとに行うような形でした。

しかし、もっと異年齢同士で子どもが主体的に過ごせるような“流れる日課を大事にしたい”(同時に遊ぶ・食べる・寝流・起きる→主体的に食べたい!寝たい!自分で決めて着替えたい!という意欲を大事にしていきたい)と考え、次第に活動や昼食のスタイルも変わり、子どもの月齢や生活リズム(睡眠リズム)に合わせた食事のタイミングや環境を作っていきました。この園では、設立当初から職員間で何度も話し合いを重ね、保育を創造していくことを大切にしています。そのような中で、今年度は「子どもの後手に回るような感じになってしまった」「意欲的な行動を認める反面、保育者が丁寧に関わる時間を確保することが難しい」という課題が浮かび上がり、「意欲や主体性の上に“丁寧さ”をプラスしたい!」と考えるようになったそうです。

そして、やまぼうし保育園へ研修に行き、「意図的に丁寧さを作り出す工夫」を見てきたそうです。加藤さんは、保育の中で子どもの意欲を大事にできているものの、1日の流れの中で、子どもたちは見通しを持ちづらかったのではないか?と考え、「保育の流れ(動線)の統一、明確で分かりやすい工夫」を職員間で話し合い実行したそうです。

研究会では、「流れる中で脱線したい子出た場合、保障する?保障しない?保障すると他の子が?」という加藤さんの質問に対して、「脱線という中にその子の主体性が出ているのではないか?」「その時以前の子どもの姿を通して、自分たち保育者の関わりがちゃんと見えているだろうか?」という意見がメンバーから出されました。また、「自主性を持った睡眠を目指したい。前向きに寝るためには?」という質問に対しては、「子どもの24時間の生活リズムについては、大人の意図的な関わりも必要ではないか」「午前中の遊びはどうだったのか?外遊びを十分にさせて、眠れる体に育てることが大切ではないだろうか」という意見が出されました。子どもの主体性を尊重することと、子どもの体や生活リズムを作っていくことは、どちらも大切なおとなの役割だと思います。保育者と子ども、子ども同士、保育者と保護者、それぞれの相互関係の中で保育がつくられる時、常に一人ひとりの子どもたちと心を通わせながら、具体的な事実をもとに保育を作って行きたいと思います。

次にあゆみ保育園の須崎さんからは、2歳をすぎた子どもさんの事例を報告して下さいました。Aちゃんは、実年齢のわりにはとても口達者で、人を傷つける言葉をよく発するそうです。その一方で、保育者と一対一の時には、甘えたり、素朴なつぶやきがとても心優しく癒されることもあるそうです。5月頃から噛みつきなどの行為が見られ、周りの子どもたちは少し怖がる様子も見られました。

そこで、担任の先生同士で話し合い、Aちゃんの思いを理解し、可能な限りスキンシップを心がけ、Aちゃん=悪い子という捉え方には絶対にならないように気をつけることにしたそうです。須崎さんからは、「Aちゃんへの対応、関わりなど、良い方法は?」「体験談を教えて欲しい」という相談があり、2歳をすぎた子どもの発達の特徴(他人には見えない自分の領域、常に面白い遊びを探している、仲間と関わりたいのだが自分の思いが強すぎてうまく関われないなど)や家庭環境などについて確認し合いながら、Aちゃんの抱えている思いをメンバーのみんなで考え合いました。

その中で、「友達の反応を見て、噛みついたり、ひっかいたりして泣かせてしまうのは、もしかするとそうしないと大人が来てくれないと感じているのではないだろうか?」「保育者との関係をしっかりと持ちながらも、Aちゃんと友達が一緒にいたいと思えるきっかけをこれからも作っていくことが大切。」「して欲しくないことをした時は、そうせずにはいられなかった姿と捉え、こうしたらいいよと具体的な方法を提案する形で伝えてみてはどうか」などの意見が出ました。

子どもが示してくれる行為や姿は、私たちに何を訴えかけているのでしょうか。「そうせずにいられない」その子の気持ちや、「そんな行為をしなければ自分の存在を示すことができない」辛さを、これからも真に受け止めていきたいです。なぜなら、そこからしか私たち保育者が取り組む「保育の課題」は見つからないからです。保育者との安心できる一対一の関係の中では、本来の素敵な姿を見せてくれるAちゃん。そんな素敵な場面を、周りの子どもたちにも知らせて行きたいものです。そのためには、Aちゃんの好きな遊びや、Aちゃんと友達の関係をつぶさに観察しながら、楽しい遊びを共有し共感できる場面を意識的につくっていきたいですね。

今回、お二人の報告を聴き、深く考え、学ぶ点がたくさんありました。そして、共通して感じたことは、「子どもから学ぶ」ということです。目の前にいる「その子」を具体的にどれだけつかめているか(理解できているか)。このことからしか、保育は始まらないと実感しました。そして、そこから保育者が自らの実践課題として取り組んでいる過程を保育者同士が共有し、子どもの育ちを支えるおとなとしての責任・役割は何か、についてみんなで考え合うことが大切なのだと思います

これからも一つひとつの事例を通して、研究会の仲間と共に考え合い、話し合って、明日からの保育の糧にしていけたらと願っています。次回の研究会での「その後」の報告が楽しみです!ありがとうございました。(文責:増淵千保美)

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