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【子育て研究センター】第4回乳児保育研究会を開催しました!

2019年7月24日(水)に、第4回乳児保育研究会を開催しました。今回は、かおるこども園の瀬戸口先生と、カトレア保育園の江崎先生に、それぞれ0歳児クラスの子どもの様子について報告をしてもらいました。

はじめに、かおるこども園の瀬戸口先生から、クラスの中の落ち着きがないと感じている男児(1歳2ヶ月)について報告をしてもらいました。具体的には、食事中や絵本の読み聞かせ場面でも動き回る(9ヶ月時点で歩行を開始し、現在は安定している)、保育室を仕切っている柵を乗り越えようとする・開いていたらすぐに出ようとする等の行動があり、また、保育者から動きを制止・制限されたときの泣きの激しさが気になっているとのことでした。瀬戸口先生としても、なるべく動きを制限しないで済むように環境構成を工夫したり、その子の気持ちを代弁する言葉かけを意識したりしているとのことでした。

参加者からは、「柵に上りたい→止められてしまうの繰り返しの中で、自分の思いが満たされないと感じる状況が続いているのだろう」、「そもそも、人間にとって歩行の獲得とはとても大きな変化。柵に上りたい、乗り越えたいというのは、外の世界を見てみたい・知りたいという健全な探索欲求。むしろ典型的な1歳児らしい姿だと思う。」といった乳児の基本的な育ちの捉えについての指摘がありました。運動機能と感覚器の育ちに応じて、自分でできることや新しい環境との出会いが一気に増えていくこの時期は、生活の中の一つずつを確認している最中であるため、自身の世界を広げていこうとしている主体としてみることが重要であるように思います。

その他にも「もしかすると遊びや生活の物足りなさを感じているのかもしれない。例えば、室内の滑り台でも、幅を広くしたり傾斜をつけてあげたりするなど、身体面で遊びごたえがあるようなものに変えてみては」、「遊んでいる場面では、その子どもの充実度・満足度の高まりとピークを見極めて、言葉掛けをするタイミングを考えて試してみたらどうか」「運動面では早いとは言え、1歳児に対して言葉かけが高度になりすぎていないか」といった声も出されました。中でも特に印象的な意見として、「発達障がいや特別支援が多方面で言われるようになった反面で、子どもの姿の中に『気になる』ことを探してしまう癖がついてしまってはいないか。昔なら『子どもらしく元気がいっぱい』とみられていた子どもが多動や過敏と見られてしまうこともあるのでは」との声がありました。もちろん子ども1人ひとりの育ちや特性・ニーズに応じた配慮の必要性は言うまでもありませんが、他方ではこの声も、保育者としては心に留め置きたい考えであると感じました。

瀬戸口先生は最後に、「今日ここで聞いた話を園に持ち帰って、改めてじっくりと考え、子どもに向き合っていきたい」と話していました。

次に、カトレア保育園の江崎先生からは、0歳児クラスについて、子どもというよりむしろ家庭の様子についての悩みを報告して頂きました。両方の祖父母が近くに住んでいるということもあり、親族からの子育てのサポートは多く得られている様子ですが、連絡帳の記載や持ち物、投薬等、親としての責任を果たせているか心配なことがあるそうです。江崎先生としても、できていないことを指摘することは控え、なるべくできていることを認めるようなかかわりを意識しているとのことでしたが、親御さんの仕事の関係で朝ゆっくりと話す時間もなく、連絡帳も返事があったりなかったりとコミュニケーションを取りにくいとのことでした。

参加者達からは、「担任としてそうした気持ちも分かるが、『責任感がない』と保育者が決めつけないようにしないといけない。私たちが見ていないところで親は親をしている部分もある。家庭内のことについても、保育者側の憶測ではなく、事実で物事を語り考えることが重要。」、「親の印象が、無意識のうちに子どもへ向ける眼差しに影響してしまうこともある。子どもの責任ではないということは忘れないようにしたい。」、「こういう子どものために保育園があるのではと思って仕事をすると、『とにかく今日、この子が一日思いっきり楽しめる保育をしていこう』という気持ちになる。その子どもが保育園でいきいきと過ごし、生きられるように私たちには何ができるかを考えて欲しい」という意見が出されました。

その他にも、「自分は、忘れ物が多い親には『子どもさえ忘れんかったら良か!』と思って接している。」、「保育者も人間。親も人間。忘れ物をすることもある。まずは保育者から自身の失敗談を伝えるなど自己開示をしていき、コミュニケーションを図りながら共に子どもを育てるパートナーになっていって欲しい。」、「確かに祖父母に甘えているところも少しはあるかも知れないが、その子どもにとっては、祖父母がいてくれることは大切なこと。まずは祖父母から保育に巻き込んでいき、家族が園に来るのが楽しみになるような保育や空間を目指してみてはどうか」等という声が挙がりました。

参加者から出された沢山の意見からは、保育者からは見えにくい部分にも思いを寄せながら根気強くかかわっていく姿勢の重要性がうかがえました。現場の先生方は、子どものことを考えるが故に、家庭や保護者に対して様々な葛藤やジレンマを抱えながら日々を過ごしています。保育・教育の場では「親が変われば子どもが変わる」という考えをよく耳にします。この考えは、一般的に広く受け入れられているように思います。しかし、裏を返せば「あなたが変わらないから子どもも変わらない」あるいは「親がダメだから子どもがダメなんだ」という否定的なメッセージとして伝わってしまう危険性もあるのではないでしょうか。メンバーの声にもあった「保育士として何ができるか」を考えたときに、「遊びを中心にした楽しい生活」を徹底して追求することで、保育士にしかできない「子どもの充実から親を支えていく」という支援の在り方が垣間見えたような気がしました。それと同時に、担任の保育者が一人で全ての対応を担うのではなく、園全体でチームとして対応するといった組織的な視点も必要であることも忘れてはならないでしょう。

瀬戸口先生は、最後に「自分の見方を振り返って、反省するところも見えてきた。また自分なりに考えてみたい」と話されていました。

今回もお二人の先生の実践を掘り下げていくことで、多くの学びが得られた有意義な時間となりました。                       (文責:二子石諒太)

 

*次回の研究会は、8月28日(水)14~16時、尚絅大学武蔵ヶ丘キャンパス 管理棟2階

尚絅子育て研究センターで、実践カンファレンスを行います。

『0歳児』報告:さくらんぼ保育園、あいあい保育園からの報告です。

お問い合わせ先:096-338-8840 メール:kosodate@shokei-gakuen.ac.jp、担当:増淵

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