地域連携REGIONAL ALLIANCES

尚絅子育て研究センターCenter

尚絅子育て研究センターについて

平成25(2013)年5月より、本学の子育て研究センターが、「尚絅子育て研究センター」へと発展的に改組されました。この再出発は、保育者養成校に期待される社会的役割の深化・拡大に応じ、より多くの学問分野からなる研究成果を子育ち・子育て研究に蓄積し、また社会へ向けて情報発信していこうとするものです。

尚絅子育て研究センターの前身である尚絅大学短期大学部子育て研究センターは、平成12(2000)年6月、短期大学部の研究センターとして設置されました。そこでは、幼児教育学科の研究員を中心に、子育て・子育ちについての調査や研究を領域横断的に行うことを通して、地域社会への貢献を目指してきました。発足から十数年を経た現在、子どもや家族にかかわる研究の意義は、これまで以上に高まっていると考えられます。保育学生を「保育園」や「幼稚園」、あるいは「社会福祉施設」という実際の現場へと送り出す保育者養成校の役割についても、引き続き、検証を重ねております。

めまぐるしく変わる保育政策の中、ただただ制度に翻弄されるばかりではなく、今こそ自分たちで明日の<保育>を創る方途を探ることが必要ではないでしょうか。子どもを育てていく上で何が大切なのか、どのように子どもを育てることが可能なのかなど、当研究センターが子どもについて共に考える場となるよう、活動を続け、また、得られた情報を社会に還元していきたいと思っております。

公開シンポジウム

尚絅子育て研究センターでは、年に一度(主に夏季)、<子育て・子育ち>にかかわるテーマを設け、現場の保育実践者や子育て中の保護者のみなさま、また地域に暮らす方々と共にシンポジウムを開催しております。どなたでも参加可能な「公開」シンポジウムです。

児やらい

「児やらい」とは、ある年齢以上になつた子どもを「家」から「共同体」へと放り出し、親離れ/子離れするという意味です。日本の産育習俗のなかで使われてきた言葉ですが、傷つきやすく、人目を気にし、自分の表現を抑えることの多い現代社会に生きる我々にもまた、「家族だのみ」の日本型社会保障システムを見直す上で、意義深い言葉ではないでしょうか。プライべートな親密関係に閉じこもり過ぎず、より多様でひらかれた人間関係を築いていく「児やらい」が、これからの私たちにこそ必要ではないかと考えています。つまり、しがらみ(拘束型関係)に縛られ過ぎず、誰とでもゆるやかに連帯していく社会的包摂(架橋型関係)を構築していくことが「児やらい」の含意です。

子育て研究センターでは、平成16(2004)年から『次世代育成研究・児やらい』を刊行してきました。本誌は、公開シンポジウム報告、研究者の研究発表、現場保育者による実践報告などを中心に編まれています。なお、平成25(2013)年発行の第10巻より冊子名を『児やらい』へと変更しました。それは「児やらい」という語を、先行世代が後発世代に教え諭す”育成”と捉えるのではなく、むしろ、他者の世界を知り、人間の尊厳をまもつていく市民社会の礎として拡大解釈していこうとするためです。

また本巻より冊子の装丁も変えました。「児やらい」のイメージを幼児教育学科の学生に伝え、それを絵として創りだす作業をしてみました。今後、尚絅子育て研究センターに集積していきたい叡智、「児やらい」のもつ思想的含意、私たちが向かつていく知への意志などが、イキイキと生きる子どもの姿として描かれています。人と人/人と自然がつながること、子どもを保護や操作の対象としないこと、人間らしい多様性が互いに承認し合えること。「児やらい」思想の骨格が、学生とのやりとりを通してより明確になりました。

子どもを後ろから追って次の世界に送り出す、子ども自身が自らの人生を引き受けることを促す営みである「児やらい」。それはとりもなおさず、現在<保育=chid care and education>や<教育=education>とはよばれていることの内実でしょう。自分の人生を引き受けた独立した個人が他者とつながつて生きていくことができるよう、かつての共同体への郷愁としてではなく、未来に生成していく市民社会のなかにこそ「児やらい」を創造/想像していきたいと思つています。

子育て研究センターのあゆみ

児やらい目次
  • 第1巻(平成16年3月31日発行)
  • 第2巻(平成17年3月31日発行)
  • 第3巻(平成18年3月31日発行)
  • 第4巻(平成19年3月31日発行)
  • 第5巻(平成20年3月31日発行)
  • 第6巻(平成21年4月30日発行)
  • 第7巻(平成22年4月30日発行)
  • 第8巻(平成23年4月30日発行)
  • 第9巻(平成24年4月30日発行)
  • 第10巻(平成25年6月30日発行)
  • 第11巻(平成26年6月30日発行)
新刊『児やらい』

※「はじめに」と「目次」を掲載しています