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【尚絅子育て研究センター】【幼児教育学科】2021年度 第2回「乳幼児保育研究会」報告

6月2日(水)に開催した第2回「乳幼児保育研究会」では、乳児の保育実践について、かおるこども園2歳児クラス担任の橋本菜々子さんから「子どもの想いにもっと寄り添いたい〜困り感をなくすには〜」というテーマでご報告いただきました。

新年度を迎えた2歳児クラスの子どもたちは、全員で21名、そのうち4名が新入園児で、Aちゃんもその一人でした。4月は、在園児も不安がることもありましたが、ゴールデンウィーク明けからようやくクラスが落ち着いてきました。ただ、新入園児の子どもの中には、熱で長期の休みだったこともあり、保育者に泣いて抱っこを求める姿もありました。

全体としては、活発なクラスで、好奇心旺盛な子どもたち。散歩に出れば、道にあるもの一つひとつに立ち止まって興味を示します。橋本さんは、その子たちの興味のある「今」に寄り添えるように、何かを発見するたびに保育者に知らせてくれる「子どもたちの伝えたい想い」をしっかりと受け止めようとしています。そうすると、子どもたちも、何かを伝えようとジェスチャーを交えて話してくれるようになり、少しずつ言葉が増えてきたそうです。

その中で、今回はAちゃんへの保育実践について報告がありました。4月当初のAちゃんは、一時期泣いて登園を嫌がることもありましたが、職員が「待ってたよ〜!」と抱っこで出迎えることで、泣くことも少なくなり、笑顔で登園することが増えました。しかし、その日の気分によっては、朝の身支度を拒んだり、抱っこのままでいたいと甘える姿もありました。自分の思いが通らない時やペースを乱された時には、泣き叫ぶことがあり、切り替えることが難しいこともありました。橋下さんは「まずは、Aちゃんが安心して登園できるように、担当保育士との愛着関係を築くことを目標」にしていきました。そして、「Aちゃんが今、何がしたいのか、何が嫌だったのか、Aちゃんの気持ちを考えながら、次はどのように援助していこうか」など、担任間でよく話をして接しているところだそうです。

その中で橋本さんが悩んでいることは、「食事を気持ちよく終わらせるにはどうしたら良いか、何かいい援助の仕方はないだろうか」という食事に関することや、生活の流れについて「次の行動への気持ちの切り替え方、気持ちが通らなかったときの落ち着かせ方、周りの子への声かけの仕方でどのように配慮したら良いのか」、また寝かせ方については「寝たいときに寝かせてあげたいが、音や視覚が敏感な子に対して、どのような寝かせ方が気持ちよく入眠できるのか」などです。4、5歳児の担任の経験が多かった橋本さんは、今年度「イヤイヤ期」真っ只中の2歳児の子どもたちに対して、試行錯誤しながら関わっているそうです。

参加者からは、「とても2歳児らしい姿を見せてくれているクラスだし、Aちゃんもしっかり今を生きているように思う」、「これまで3歳以上児クラスの経験が多かったので、どうしても『できないこと』に目がいってしまうのかもしれない」などの意見がありました。テーマの副題にあった「困り感をなくすためには」という言葉は、もしかすると橋本さん自身が困っていたことなのかもしれません。この時期の子どもの発達を踏まえつつ、今、目の前にいるその子を、まずはそのまま丸ごと受け止めるということろから出発してみる。そうすると、きっとAちゃんの素敵な育ちも見えてくるはずです。

また、「2歳児は、道草散歩をたくさんしながら、色々な発見をし、保育者と、また保育者が仲立ちして、子ども同士で「きれいだね」「あれみたことあるね」「これとおんなじだね」「いっぱいあるね」と一つのものを共同注視して、共感しあえる関係をつくっていく時期でもある」というアドバイスもありました。さらに、生活場面では、「子どもの主体性を尊重する」という名の下で放任になっていないか、ということも改めて考えなければなりません。例えば、睡眠の場面では、1日を気持ちよく過ごせるために、生活リズム、睡眠のリズムを作っていくことは子どもの心身の成長と情緒の安定に重要です。参加者からも、「子どもに任せっきりではなく、『眠たい時は眠るんだよ。ねむたい、ねむたい』とおとながリードしてあげることも必要」という意見がありました。その前提として、午前中の遊びを充実したものにしていくと、心も体もほぐれていき、昼食もよく食べ、心地よい眠りにも繋がります。最近、スマホやタブレット、テレビなど過緊張を引き起こす電子機器や電子音が小さな子どもたちの生活にも入り込み、眠りにくい子どもたちが増えています。そのような子どもには、リズム遊びの「金魚」「どんぐり」「ハイハイ」を日頃から行い、寝る前も足を持って体全身がゆらゆら揺れるように金魚運動をしたり、マッサージをするとスーッと眠りに入れることも多いと言います。

お母さんは、末っ子のAちゃんに対して、「言葉がなかなか出てこないのが気になる。家でもイヤイヤがひどくて困っている」という悩みを打ち明けてくれたそうです。参加者からは、「今、『指さし』は出ているか?言葉の出る前兆の指さしがたくさん見られるような遊びや暮らしを保育園の中でどう作っていくか、ということを考えることが大切」、「お母さんとも話し合いながらYちゃんの一日の生活リズムをつくっていく働きかけも必要ではないか」という意見もありました。

Aちゃんの心と体が解放されるように、散歩に出かけたり、屋外でたっぷりと遊んで、仲間の存在に興味を一杯持ちながら保育者を仲介に少しずつ関わりを深めていく。そして、安定した日々の暮らしを送れるよう、家庭と連携していく。このことは、Aちゃんと2歳児クラスの基本的な保育課題ではないかと思いました。「子どもの想いにもっと寄り添いたい」という橋本さんの願いは、そうした具体的な関わりを通して実現していくことでしょう。その後の様子もぜひご報告いただきたいです。ありがとうございました。(文責:増淵千保美)

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