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【尚絅子育て研究センター】第8回乳児保育研究会を開催しました!

「保育を振り返って~こっこちゃん~」
「アタッチメントと自己肯定感」

 2017年11月29日(水)に、第8回乳児保育研究会を開催しました。今回は、山都みらい保育園の折尾先生から「保育を振り返って~こっこちゃん~」と、乳幼児の発達支援教室をされている『株式会社ままこや』の山野井さんから「アタッチメントと自己肯定感」というテーマで、それぞれ報告をしていただきました。

 山都みらい保育園の折尾先生は、0歳児クラスの男児について、入園当初からこれまでの生活と育ちを丁寧に記録されていました。この園では、気になる子どもをクラスの中心に据えてながら日々の保育実践を考えていくことを以前から続けられています。そのために、職員同士での学び合いを大切にされており、毎月の園内研修と自主研修を行っているそうです。

 報告のタイトルになっている「こっこちゃん」というのは、園の近くで飼育されているニワトリの名前です。男児は、生まれながらにして病気をもっており、複雑な家庭環境の中で生きている子どもですが、園生活でこっこちゃんに興味を示しながら繰り返しかかわったり、戸外で自然に触れながら過ごしたりすることで徐々に生き生きした姿を見せることが増え、安心して自己主張をすることができるようになったそうです。

 折尾先生の報告からは、子どもに向ける温かい眼差しや、子どもの生き生きした姿を見逃すまいとする保育者の姿勢がとても伝わってきました。例えば、先生はジャングルジムを一生懸命に昇り降りしようとする場面に、男児の育ちたいという思いを汲み取り、そのために子どもの姿を信じて見守ることを意識されていました。私たち保育者は、しばしば「見守る」という言葉を使います。保育の場で何気なく使われているこの言葉ですが、本当の「見守る」とは、ただ表面的に眺める、子どもの動きをとりあえず待って見ておく、という意味ではありません。本当の意味での「見守る」とは、子どもが何を感じているのか、どうなりたいと願っているのか、と子どもの内面を推し量りつつ、子どもの「こう在りたい」「こうなりたい」という心(欲求)に保育者が思いを寄せることで、「あなたは今これがしたいのね。」と受け止める眼差しを子どもに向ける行為であるはずです。このジャングルジムを登ろうとする男児に対し、結果はどうあれ信頼して委ねる(見守る)という姿勢は、保育というものの本質について触れているような気がしました。

 また、この実践において最も重要なことは、日々の生活の中での子どものつぶやきや表情をつぶさに拾い上げ、子どもの心に寄り添いたいと願いながら、絶えず自身の保育を省察していく保育者の姿勢があったからこそ、男児の生き生きした姿が見えてきたということです。山都みらい保育園では記録を大切にしています。折尾先生は、記録を書くことで、「自分の保育を書き出すことで振り返りになり、同時に保育者自身の保育課題が浮かび上がってくる。」「園内研修の場で他の職員の意見を貰うことができ、またそれが職員間での共通認識にもなる。職員が子どもに同じ気持ちでかかわることで、その子どもは見てもらっているという安心感をもっているように感じる。」と話されていました。

 研究会のメンバーからは、男児が他児とかかわる場面を受けて「0歳児での友達同士の関係をどうつくってきたのか。」という質問が出されました。折尾先生は「月齢の違いに配慮しながらも、子どもたちが周囲の環境とかかわっていく中で、子どもにとって基地となるもの(ここでは、こっこちゃんやジャングルジムなどの集まる場や物)を介しながら繋がりができていったので、そこを大切にした。」と話されました。

 最後に、男児が園で楽しく過ごすことが、家庭生活や母親の安心感に繋がっているとまとめをされていました。私たちは園で見せる子どもの姿を受けて、どうにか自己発揮しながら安定した園での時間を過ごすことができるようにと考え、家庭の生活実態について把握しながら保護者を支えたり、改善を促したりしようとします。しかし、この報告を聞いて、反対に園での子どもの生き生きした姿を伝えていくことで家庭生活を保護者と共に創っていくという視点も今日の保育において大切だと考えさせられました。

 次に、研究会メンバーで理学療法士でもある山野井さんからお話をしてもらいました。山野井さんは、中央区にある「ままこや」という母子の発達支援・相談施設を運営されており、時には保育現場を訪ねるなど精力的に活動なされています。今回は、山野井さんから、「アタッチメントと自己肯定感」というテーマで、心理学的な見地からアタッチメント(信頼関係を基盤にした精神的な絆)や自己肯定感(自分のことを好きと思える気持ち)、自己効力感(チャレンジする気持ち)の関係性、そしてそれらを育むための親子のかかわり方のポイント等について教えてもらいました。こうした親子関係の基礎等を改めて学ぶことで、現場の保育者たちが保護者との子育てを支える中で大切にしていることをもう一度確認することができたように思います。

 今回の研究会も、メンバーそれぞれの自園での取り組みを聞き合ったり、活発に意見を交わしたりしながら学びを深めることができた時間となりました。

(文責:二子石)

 次回の研究会は、「遊びについて(2)」をテーマに考え合いたいと思います。

 12月20日(水)14~16時、尚絅大学武蔵ヶ丘キャンパス 管理棟2階 尚絅子育て研究センター室にて開催いたします。
お問い合わせ先:096-338-8840(代)
メール:kosodate@shokei-gakuen.ac.jp、担当:増淵

山都みらい保育園の折尾先生(右)
(株)「ままこや」の山野井先生(中央)
活発な意見交流がありました!
実践を共有し新たな学びを得ました!

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